ギャッベ

イラン高原の西側を背骨のように南北に連なるザーグロス山脈。この一帯に住む南ペルシャの遊牧民、ロル族、バフティヤーリー族、ガシュガイ族などによってつくられているユニークな絨毯があります。それがギャッベ絨毯です。
ギャッベとは、ペルシャ語のファールス地方の言葉で、「長い毛足をもつ絨毯」のことを指し、古くは16世紀の文献にも記されています。この絨毯が世界に知られるようになったのは、比較的最近で、1970年代になってからのことです。ギャッベの、ペルシャ絨毯とは一味もふた味を違ったデザインとテイストは、「アートそのもの」といった評価を得て、欧米で大ブレークしました。

 

ギャッベの種類

プレーン

文様も柄も何も無い無地。
ギャッベ特有の色のグラデーションを出し、色ムラの濃淡を付けたものもあります。

ボーダー

四角形枠模様。
異なる次元、時間などを表現するために用いられます。

ストライプ

模様を縞的に配置。
細かな柄であれば楽しい雰囲気、大柄なストライプであれば静的な大地に見えてきます。

アート

織り手の感性のままに描いていきます。図柄は花や人、山や大地を描いたものの他、都会的シンプルなモダンアートに通じるデザインまで多彩に創作されています。

ギャッベのルーツ

ガシュガーイー族は、アゼルバイジャン語に近いトルコ語方言を話す遊牧民です。彼らは13世紀モンゴルの襲来を避けるため北方からファールス地方へと逃れてきたセルジュークの生き残りだといわれています。ガシュガーイーという言葉の由来は諸説あり、トルコ語の動詞「カチュマク=逃げる」からきているとも、16世紀サファヴィー朝の英主シャー・アッバースによってファールス地方の部族の管理を委託されたジャーニー・アガー・ガシュガーイーの名の由来するともいわれています。ガシュガーイーは、単一民族の集団ではなく、いろんな部族による連合組織となって行動しています。

ギャッベの制作工程

1.紡ぐ

自分達が飼っている羊の毛を刈取り、手か櫛のような毛すき道具を使って梳かれます。そして紡錘を使って手で紡いでいきます。次に撚られて強度をつけます。

 

2.染める

地元で採取された植物染料が用いられています。幾代も受け継がれてきた職人の経験と勘がギャッベ独特の色出しの決め手です。1本1本手作業で染めています。

3.織る

地面に設置される水平機を使用します。色糸を縦糸に絡ませ毛羽立たせることによって文様をあらわします。ギャッベには手本やデザイン画はなく、頭に浮かんだイメージを即興で織り込んでいきます。

4.洗う

織りあがった絨毯は、採寸され、検品されます。チェックが済むと長期にわたる汚れを除去するため、洗浄されます。その後、仕上げの工程にまわされます。最後に、パイルが一定の厚みとなるように刈込みを行ないます。

ギャッベの文様

羊、山羊

遊牧民に親しい動物であり、ギャッベに最も多く登場する文様。
子孫繁栄。

鹿

子供を大切に育てる生態から「家庭円満」の象徴。

ラクダ

遊牧民にとって羊についで親しい動物。成功。

憧れ。神の遣い。

女性を強調したデザインの場合、多産への願い、子孫繁栄を意味する。
子供の場合、健康への願いなど。

 

ギャッベのクオリティ

カシュガイ族は5部族(カシュクリ族、アマレ族、ダルシェリ族、シシブルキ族、フェルシマダン族)の連合体で構成されています。 各部族ともギャベ織りの名手ぞろいですが、カシュクリ族は織り目の細かいハイクラスなギャッベを織ります。
カーペッテリアでは、織り、目の細かさによりクラスを3つに分けています。
目が細かいほど、より複雑なデザインやソフトな手触り感を楽しめます。

【スタンダードクラス】

1cm当たり2〜2.5ノット
1平方cm当たり4〜6ノット

【ファインクラス】

1cm当たり3〜3.5ノット
1平方cm当たり9〜12ノット

【ハイクラス】

1cm当たり4〜5ノット
1平方cm当たり16〜25ノット

【スタンダードクラス】

1cm当たり2〜2.5ノット
1平方cm当たり4〜6ノット

【ファインクラス】

1cm当たり3〜3.5ノット
1平方cm当たり9〜12ノット

【ハイクラス】

1cm当たり4〜5ノット
1平方cm当たり16〜25ノット

厚さ 約2.5cm

厚さ 約2cm

厚さ 約1.5cm

イランの遊牧民カシュガイ族が織る、ベーシックなギャッベ。
素朴な風合いと長い毛足によるフカフカとした踏み心地を体感できます。

スタンダードクラスに比べ織り密度が高く、高いクオリティながら低価格なこともメリットです。多くはアマレという部族によって織られます。

ファインクラスよりさらに高い織り密度で、毛足は短く薄手の仕上がりです。素材も高品質のものが使用されており使うほどに上質感が味わえます。主にカシュクリという部族によって織られます。